Neuromuscular blocking agents
1、神経筋接合部の模式図
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神経筋接合部において、運動神経のシナプス終末に信号が伝わると、AChが遊離される。遊離されたAChは、骨格筋の表面(終板)に存在するニコチン性Ach受容体に結合すると、Na+などの陽イオンの流入が起こり、脱分極および活動電位が生じ、これがT管に伝わる。T管のL型Caチャネルが活性化化されると、筋小胞体のryanodine受容体からCa++を一瞬に遊離させ、筋収縮が生じる。この現象を興奮収縮連関(excitation- contraction coupling)という。ニコチン性ACh受容体は、α、β、γ、δ(ε)の4種類のサブユニットから構成される陽イオンチャネルである。AChの結合部位はαサブユニットである。
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骨格筋の興奮収縮連関 ニコチン性Ach受容体(NaCh)刺激により脱分極が起こり、この興奮は速くT管に伝わる。T管には、L型Caチャネル(L-CaCh、dihydropyridine受容体)が存在しており、筋小胞体(SR)のryanodine受容体(RyR)と密に接している。L型Caチャネルが活性化されると、筋小胞体のryanodine受容体からCa++を一瞬に遊離させ、筋収縮が生じる。骨格筋のRyRはRyR-1型である。 参照:ラング・デール「薬理学」(2007) |
心筋の興奮収縮連関 心筋にはT管がなく、L型Caチャネル(L-CaCh)を介して流入するCa++がカルシウム放出の引き金になる。脱分極(NaCh)による興奮は、骨格筋よりも遅く伝わりL型Caチャネルを活性化してCa++を流入させる。流入したCa++によりryanodine受容体(RyR)が次々と活性化され、筋小胞体(SR)からCa++が遊離する。この現象をCa++-induced Ca++ release(CICR)という。 なお、心筋のRyRはRyR-2型である。 |
2、神経筋接合部遮断薬
競合的筋弛緩薬と脱分極性筋弛緩薬に分類される。
競合的筋弛緩薬は、ニコチン性ACh受容体に対して、AChと競合することにより、筋収縮を抑制する。 |
脱分極性筋弛緩薬は、ニコチン性Ach受容体に結合し脱分極(一過性の筋攣縮)を引き起こすが、 |
横隔膜神経−筋摘出標品に0.5Hzの電気刺激を与えると横隔膜筋の収縮が見られる。電気刺激を続けながら、tubocurarine(2μM)を与えると、筋弛緩が得られる。この時、physostigmine(0.5μM)を与えるとtubokurarineの筋弛緩作用に拮抗する。洗浄後、succinylcholine(1.5μM)を与えると、一過性の筋収縮の後、弛緩が見られる。この時、physostigmineを投与すると、弛緩作用が増強される。 英国薬理学会作成のシミュレーションソフトを用いた。 |
作用機作による分類 | 薬物 | 副作用など |
競合的筋弛緩薬 |
d-tubocurarine |
下記 |
vecuronium |
最もよく使用されている。心血管への作用なし。 |
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rocuronium | vecuroniumの誘導体であり、作用発現時間がベクロニウムよりも短いのが特徴で、バランス麻酔に用いられる。 ・sugammadex(非脱分極性筋弛緩薬拮抗薬)は、rocuroniumと結合して、神経筋接合部での薬の濃度を減少させ、筋弛緩に拮抗する特異的拮抗薬。 |
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pancronium |
tubocurarineより5倍作用が強い。 |
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脱分極性筋弛緩薬 |
suxamethonium |
下記 |
decamethonium(C10) |
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tubocurarine
臓器 |
薬理作用と副作用 |
骨格筋 |
最初に、小さい速い筋肉(外眼筋、眼瞼筋、嚥下筋など)が |
肥満細胞 |
ヒスタミンを遊離させ、血圧低下、気管支収縮を引き起こす。 |
神経節 |
神経節遮断がおこり、血管拡張や血圧低下がおこる。 |
臓器 |
薬理作用と副作用 |
骨格筋
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一過性の筋攣縮の後、弛緩を引き起こす。筋攣縮による疼痛や眼内圧の亢進がおこる。 |
心臓 |
ムスカリン様作用があり、徐脈や心停止を引き起こすことがある。 |
3)dantrolene
dantrolene
吸入全身麻酔薬で生じる悪性高体温症や精神病治療薬で生じる悪性症候群の治療に用いられる。
dantroleneは骨格筋のCa++遊離チャネルのryanodine受容体に作用してCa++の遊離を抑える
ことにより、筋拘縮による発熱を抑える。
3 、ニコチン性ACh受容体
シビレエイやデンキウナギの発電器官は、ニコチン性ACh受容体が豊富に存在し、ここから受容体
が精製された。また台湾ウミヘビの毒からニコチン性ACh受容体に特異的に結合する
α-bungarotoxinが単離され、受容体の精製、受容体の諸性質、さらには重症筋無力症の病態な
どが明らかにされた。
ニコチン性ACh受容体は、α2βγδサブユニットの5量体から形成されている。各サブユニットは、4つの膜貫通セグメント(M1-M4)から構成され、各M2セグメントが向き合って疎水性の小孔を作り、Naイオンの通過を妨げている。2分子のAChがαサブユニットの細胞外N末に結合すると、M2セグメントが15度回転して、ゲートが開口し、Naイオンが流入する。他のセグメント(M1,M3,M4)は、チャネルの外側(脂質側)を形成している。 |